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vol.80

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 がんを克服したら、次は・・・

 
 今から25年前。大腸がんだった祖母は「胃潰瘍」と周囲に言われながら闘病生活を送っていました。
 祖父も大腸がんで同じ症状を示した末に亡くなっていましたので、本人は内心本当の病名を悟って
いたと思います。でも誰もそれを口にすることなく、69歳で他界しました。
 それから十数年後。医師になったばかりの私に伯父が「俺は大腸がん。でも腹切らんで治せるらしい」
とサラリと言いました。以後全く病気をすることなく今も健在です。

 25年前、がんの本人告知は一般的ではなくむしろタブーに近いものでした。
 当時も今もがんは日本人の死因の約3割を占め、トップであることに変りはありません。でも平成に
入ってから、がんの告知はごく一般的になってきました。
 その要因としては、緩和ケアが発達し、末期の患者さんもできるだけ希望に沿う過ごし方が可能に
なったことに伴い、自分で「死支度」をすることを望む方が増えたことも挙げられるでしょう。
 しかし最大の要因は、やはりがんが必ずしも「不治の病」ではなくなったことにあると考えられます。
そしてそれは、多くの人々の努力により、より手軽かつ正確な早期がんの診断が可能になったこと、
そして外見的変化の少ない手術や、若干進行したがんへの化学療法や放射線療法の併用など、
より安心して受けられる治療法が開発されてきたことによります。

 しかし、感染症と違ってがんは撲滅できません。日本人の死因全体に占める割合は25年前から
ほぼ横ばい。がんにかかっても死なない人が増えたことを考えると、がんにかかる人は増えている
ことになります。

 がんは、細胞に含まれる遺伝子が故障し、その細胞が周囲の組織との調和をとらずにやみくもに
増殖することで発生します(「あいつはこのグループのガンだ」という陰口と一緒ですね)。
 この遺伝子のバグはある程度決まった割合で生じるようですが、免疫システムが故障した細胞を
いち早く除去することで発症しないで済んでいます。ところが、老化や生活習慣の悪化などにより
免疫力が低下すると、そのシステムが追いつかなくなってしまうのです。

 人間以外の動物にもがんは発症します。いやな言い方をすれば、個体数をコントロールするため
に老いた者は死ぬよう神様が仕組んだプログラムとも言えるでしょう。

 けれど人間はそれを克服して長生きしようとしています。そのためには、神様に言い訳できるだけ
の「何か」を行うことが必要なのではないでしょうか?
 心身ともに健康を保ち、若い人々に年の功で得られた多くの経験と励ましを伝え、さらには安心
して次世代を生み育てられるよう助ける…。がんから生還した人々には、必ずまだこの世でしなければ
ならない使命がきっと何か残っているはずです。
 年齢やがんにかかったことを理由にせず、「延長」できた人生をしっかり戦い、楽しんでいただき
たいものです。

 

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今回は、(財)山口県予防保健協会 保健部 医局 医師 山田 千佳さんに寄稿していただきました。
ありがとうございました。