vol.81
歯周病も万病のもと?
歯周病は歯と歯ぐきの境目に滞留したプラークが原因となって歯周組織を破壊する病気です。症状
としては歯ぐきが腫れたり、膿が出たり、歯がグラグラしたり、最後には歯が自然に抜けてしまうという
ことも皆さん御存知のことと思います。しかし、歯周病は口の中だけの病気と思ってはいませんか?
最近の研究によって歯周病は口の中の病気にとどまらず、全身にも悪影響を及ぼしているのでは
ないかと言われるようになってきました。
なぜ歯周病が全身に影響を及ぼすのかという理由のひとつは「歯周病菌が血液に入り込んで全身に
運ばれる」からと考えられています。
ふつうの細菌は血液中では白血球などの殺菌・貪食(どんしょく)作用のため生きていることはあり
ません。しかし歯周病菌は血液中に侵入してもあまり殺菌・貪食されずにしばらくは生き延びています。
そして運ばれた先で有害な生成物を遊離するなどの活動をするため、周囲の組織に障害を引き起こし
ます。
以下は現在のところ歯周病と関わっていると考えられている全身の病気です。
●歯周病と動脈硬化・虚血性心疾患・脳梗塞
血液中に入った歯周病菌が血管壁に付着、感染するとその防御反応の副作用として動脈硬化を
引き起こしている可能性があり、それから虚血性心疾患や脳梗塞につながると考えられています。
また亡くなった方の血栓から歯周病菌が発見されたという報告があり、血管中に進入した歯周病菌
が核になって血栓が形成される可能性が示唆されています。
●歯周病と感染性心内膜炎
心臓弁膜症など心臓の弁に障害のある人、人工弁置換手術などを受けている人などでは歯周病菌
が血液の流れの悪い箇所に付着して増殖し感染性心内膜炎を発症することがあります。
感染性心
内膜炎で亡くなった方の心臓から歯周病菌が検出された例もあります。
●歯周病と肺炎
誤嚥性肺炎を引き起こした方の肺や痰の中から歯周病菌も検出されています。
また、病室や介護の現場でも口腔ケアの行き届いている方は誤嚥性肺炎の発症が少ないことも
分かっています。
● 歯周病と早産、低出生体重児(未熟児)出産
出産時に胎児を外へ押し出す際に子宮を収縮させるために分泌されるプロスタグランディンという
物質がありますが歯周病菌は免疫担当細胞を刺激してこのプロスタグランディンを誘導します。
「歯周病に罹患している妊婦は早産となる確率は歯周病に罹患していない妊婦に比べて約7倍」、
「歯周病の重症度に応じて低体重児の出産の頻度が高くなる」などの報告があります。
●歯周病と糖尿病
歯周病は腎症、網膜症、神経障害、心疾患、脳卒中に次ぐ「第6の合併症」といわれています。
これまでの疫学研究においても糖尿病患者には歯周病が多く、また歯周病が糖尿病を悪化させる
可能性が報告されていました。
血液中に流入した歯周病菌に対する反応として免疫担当細胞からTNF-αという物質が産生され
ます。このTNF-αは糖代謝機能を妨げ、インシュリンの働きを阻害するため、糖尿病の血糖コントロール
に影響します。
逆に歯周病の治療によって糖尿病患者のHbA1c(血糖コントロールを表す指標の一つ)の値が
改善されたという例も報告もされています。
この分野の研究はまだ途についたばかりといってよく、さらに研究が進んで他の全身疾患との
関連も解明される可能性もあり、今回挙げたものはほんの一部にすぎないかもしれません。
昔から「かぜは万病の元」といいますが、今後「歯周病は万病の元」といわれる日もそう遠くない
でしょう。
そのためにも普段から歯周病が発症・進行しないようにブラッシングなど予防に心がけると同時に
3ヶ月から半年に一度は歯科で歯ぐきの状態や歯石がついていないかのチェックを受けるとよいでしょう。
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今回は、山口県歯科医師会 公衆衛生委員 末益 和幸さんに寄稿していただきました。
ありがとうございました。
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